牛ハツは、ホルモンの中でも特にクセが少なく、淡白な味わいが特徴です。焼肉好きな方には馴染みがあるかもしれませんが、ホルモンや脂っこいお肉が苦手な方でも食べやすい部位です。そのため、幅広い世代におすすめされています。鉄分やビタミンB群が豊富で、疲労回復や貧血予防にも効果的と言われます。
また、調理法も多彩で、焼き物から煮込み料理、さらには刺身としても楽しめます。本記事では、牛ハツの部位について詳しく解説し、その栄養素や美味しい食べ方、レシピをご紹介します。新しい味覚との出会いをぜひお楽しみください。
牛ハツ(心臓)ってどこの部位?
牛ハツは、牛の心臓の部位です。英語で心臓を意味する「Hearts(ハーツ)」が由来で「ハツ」と呼ばれるようになりました。牛一頭から取れるハツは約2kgと、牛の大きさから考えると意外に小さく感じられます。牛肉全体では約300kgとされているので、ハツはその1%にも満たない計算になります。
牛の胸部中央付近、肩ロースと肩バラの間に位置するハツは、「ココロ」「ハート」「ヘルツ」「ヤサキ」「やり先」など、様々な呼び名があるのも特徴です。地域によっては、豚や鶏の心臓と区別するために、これらの呼び名を使うこともあるようです。
レバーに似た見た目ですが、ホルモン特有のクセが少ないため、万人受けする部位といえるでしょう。コリコリとした歯切れの良さと、淡白でヘルシーな味わいが魅力です。脂が多いものは「アブシン」と呼ばれ、新鮮な証拠として珍重されることもあります。鉄分も豊富なので、貧血気味の方にもおすすめです。
アブシン(ハツカルビ)とは?
アブシンとは、牛の心臓の一部である「ハツ」の中でも、特に脂身が多い部分を指します。ハツは全体で見ると脂身が少ないため、脂の旨味もしっかり楽しめるアブシンは希少部位として扱われることが多いです。
ハツ自体は淡白な味わいが特徴ですが、アブシンは脂身が加わることで、濃厚な旨味とジューシーな食感が楽しめます。あっさりとしたハツとはまた違った、コクのある味わいが魅力です。食感は、厚切りタンを彷彿とさせるような弾力がありつつも歯切れがよく、食べごたえも抜群です。
お店によっては、ハツとアブシンを分けて提供しているところもあります。もしメニューに見つけたら、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
牛ハツ(心臓)の味・食感の特徴
牛ハツは、臭みが少なく淡白な味わいが特徴。ホルモンが苦手な人でも食べやすいと人気があります。また、豊富な鉄分やミネラル、ビタミンといった栄養価の高さから、貧血予防としてハツを食べる人も少なくありません。
牛ハツの最大の特徴は、その独特な食感。きめ細かい筋繊維が織りなすハツは、サクサクと歯切れの良い食感です。薄切りにすれば、より一層そのサクッとした食感が際立ちます。一方で、厚切りにした場合は、ハツ特有の弾力を楽しむことができます。
焼肉店では、部位によって厚切りや薄切りなど、異なるカットで提供されることが多いようです。
牛ハツ(心臓)の栄養価
牛ハツはその栄養価の高さからも人気の部位です。ここでは牛ハツのカロリーやその他の栄養素について解説します。
牛ハツ(心臓)のカロリー・3大栄養素
100gあたり | 牛ハツ |
カロリー | 128kcal |
タンパク質 | 16.5g |
脂質 | 7.6g |
炭水化物 | 0.1g |
牛ハツは100gあたりタンパク質16.5gと高タンパク質な食材です。また、炭水化物も0.1gと低脂質で、糖質制限中の方でも気軽に食べることができます。
噛みごたえもあるので満腹度が高く、ダイエット中のおやつなどにも合っています。
牛ハツ(心臓)の栄養価について
牛ハツ(心臓)に含まれる中でも多いビタミン・ミネラルとしては
- 鉄分
- 亜鉛
- ビタミンB郡
などが多く含まれ、ヘルシーな食材としても注目されています。
また、牛ハツには鉄分が豊富に含まれています。鉄分は貧血予防に効果的で、成人女性は1日あたり6.5mgの鉄分摂取が推奨されています。
牛ハツを100g食べることで、1日に必要な鉄分の約半分(3.3mg)を摂取できます。その他にも、ビタミンB群や亜鉛など、健康維持に欠かせない栄養素が豊富に含まれています。
牛ハツ(心臓)の美味しい食べ方
ここでは牛ハツを美味しく食べる調理法を解説します!
牛ハツ(心臓)の美味しい食べ方①焼き物
牛ハツは、その独特の食感と淡白な味わいが魅力的な食材です。焼くと、表面はカリッと香ばしく、中はプリッとした食感が楽しめます。
シンプルな塩コショウで味付けして焼き上げるのも良いですが、ガーリックやハーブを効かせた洋風な味付けもおすすめです。 また、タレに漬け込んでから焼けば、ご飯が進む一品になります。
焼肉屋さんでは、牛タン塩のようにレモンを絞ってさっぱりといただくのも人気です。
牛ハツ(心臓)の美味しい食べ方②煮込み
牛ハツは、臭みが少なく、煮込み料理にも最適な食材です。長時間煮込むことで、ハツは驚くほど柔らかく仕上がります。
ハツだけで煮込んでも美味しいですが、他の部位と組み合わせることで、食感や風味のバリエーションを楽しむことができます。例えば、牛すじと一緒に煮込めば、とろけるような牛すじと、プリッとしたハツの食感のコントラストが楽しめます。
味付けは、醤油ベースの和風、味噌ベース、トマトベースの洋風など、お好みの味付けで楽しめます。
牛ハツ(心臓)の美味しい食べ方③刺身
牛ハツは、独特の食感と風味が魅力ですが、新鮮なものなら刺身としても楽しむことができます。(牛肉の刺身は、法律で提供条件が定められており、クリアしていれば違法ではありません。)
くさみが少なく、レバーなどに比べて食べやすいのも特徴です。サクッとした独特の歯ごたえと、噛むほどに溢れる肉の旨味は、まさに新鮮なハツだからこそ味わえる贅沢と言えるでしょう。
しかし、生食には食中毒のリスクが伴うことを理解しておく必要があります。
牛ハツ(心臓)の美味しい食べ方④低温調理
近年話題の低温調理は、牛ハツを調理するのにも最適な方法です。60度程度の低い温度でじっくりと加熱することで、しっとり柔らかな食感に仕上げることができます。
従来の調理法では、牛ハツをしっかりと火を通そうとすると固くなってしまうことがありました。しかし、低温調理なら、中心温度を60度から63度で30分から1時間ほど加熱することで、食中毒の心配なく、生のような鮮やかな色とプリッとした食感を残したまま食べることができます。
低温調理で仕上げた牛ハツは、そのままスライスして、お好みのソースや薬味と合わせるのはもちろん、サラダやカルパッチョなど、様々な料理にアレンジできます。
新鮮な牛ハツ(心臓)を見分けるコツ
せっかく牛ハツを購入するなら、できるだけ新鮮なものが良いですよね。ここでは新鮮な牛ハツの見分け方として
- ドリップ
- 弾力
について解説します。
新鮮な牛ハツ(心臓)の見分け方:ドリップの確認
新鮮な牛ハツを選ぶ際に、切り口から滲み出る赤い液体に注意してみてください。
これはドリップと呼ばれるもので、肉の旨味成分を含む水分が流れ出ている状態です。 ドリップが多い牛ハツは、鮮度が低下しているサイン。 せっかくの牛ハツの美味しさを味わうためにも、ドリップが少ないものを選びたいです。
買ってから時間が経っているものや、解凍を繰り返したものがドリップが多くなる傾向があります。 ドリップが少ない新鮮な牛ハツは、弾力があり、表面にツヤがあるのが特徴です。
新鮮な牛ハツ(心臓)の見分け方:弾力の確認
新鮮な牛ハツを選ぶとき、弾力は重要な判断基準になります。鮮度の良いハツは、指で押すと跳ね返すような弾力があり、ハツの先端部分はピンと張って角が立っています。
一方、時間が経ったハツは弾力が失われ、だらりと垂れ下がり、角も丸くなってきます。新鮮なハツは、見た目にもハリとツヤがあり、まるで赤ワインのような深みのあるボルドー色をしています。新鮮なハツを手に入れて、美味しい料理を作りましょう。
牛ハツ(心臓)の購入場所
牛ハツは、スーパーマーケットや精肉店で手に入れることができます。しかし、牛肉の品質は産地や種類によって異なり、ハツも同様です。より高品質なハツを求めるなら、専門の精肉店で購入するのがおすすめです。専門店の多くは、特定の産地や飼育方法にこだわった牛肉を扱っており、新鮮で風味豊かなハツを入手できます。
また、通販サイトを利用するという方法もあります。通販サイトでは、全国各地の専門店から取り寄せた様々な種類の牛ハツを購入可能です。特に、飼育方法や飼料にこだわって育てられた黒毛和牛のハツは、通販サイトで多く見かけます。黒毛和牛のハツは、肉質が柔らかく、芳醇な香りが特徴で、臭みが気になる方にもおすすめです。
通販サイトを利用する際は、レビューを参考にしたり、お店の評判を確認したりして、信頼できるお店を選ぶようにしましょう。
牛ハツ(心臓)の捌き方と下処理方法
牛ハツを購入する時は、基本的には下処理され、カットもすんだものを購入することがほとんどだと思います。
ここではややマニアックな方向けにはなりますが、牛ハツを塊で購入した際に役立つよう、下処理の手順を解説します。
牛ハツ(心臓)の基本的な切り方
スーパーなどで販売されている牛ハツは、筒状に開かれた状態で売られていることがほとんどです。調理の際は、まずハツの両端にある薄い部分を切り落とします。
この時、ハツの白い脂身の部分に軟骨が残っている場合があり、誤って包丁で切ってしまうと刃こぼれの原因になります。脂身の部分を避けるように、注意しながら切り離しましょう。
両端を切り落としたら、ハツの中心部分で二つにカットします。ハツは断面の色が変わりやすい食材なので、すぐに調理しない場合は、切り分けた状態で保存してください。
部位別の薄切り方法
牛ハツを柵状にしたら、表面の白い部分や皮が目立つ箇所を避け、赤身の部分を選び、これをお好みの大きさにスライスします。(一般的には厚さ3〜5mm程度に切り分けます。)
脂身が多い箇所は「アブシン」と呼ばれる高級部位で、同様に3〜5mm程度にスライスします。脂と赤身のバランスが2:8ほどになると、美味しくいただけるとされています。
最初に切り落とした両サイドの薄い部分はやや固いため、他の部分より薄めの2mm程度に削ぎ切りすると食感が良くなります。
キューブ状のカット方法
牛ハツの中でも、特に肉厚で鮮やかな赤身の部分は、キューブ状にカットすると美味しくいただけます。一辺1.5cm〜2cmほどの立方体に切り、お好みでサイズを調整してみてください。
薄切りとは違った歯ごたえが楽しめるので、一味違う美味しさを味わえます。
刺身用の赤身の薄切り
牛ハツを刺身で味わうなら、やはり「赤身」の旨味を堪能したいものです。牛ハツの赤身は、他の部位に比べて柔らかく、淡白ながらも独特の風味があります。
刺身にする場合は、まず余分な脂や筋を取り除き、1mm程度の薄切りにしましょう。この薄さが、舌触りの良さと味わいを引き立てます。包丁は、普段使いのものとは別に刺身包丁を使うのがおすすめです。
まな板も肉用に使い分けることで、より安全に調理できます。鮮度が命の牛ハツだからこそ、丁寧な下処理で最高の美味しさを引き出したいですね。
※刺身で召し上がる時は食中毒のリスクがあります。
牛ハツ(心臓)に合うお酒の選び方
ここでは牛ハツに合うお酒を解説します!
牛ハツ(心臓)に合うお酒:ビール
牛ハツ、つまり心臓は、他の部位に比べて淡白でクセが少ないのが特徴です。そのため、様々な味付けに合う万能選手と言えるでしょう。そんな牛ハツと相性抜群なのが、ビールです。ビールの持つ爽快な苦味と炭酸の刺激は、牛ハツの旨味をさらに引き立ててくれます。
特に、焼肉や炒め物など、濃いめの味付けで楽しむ場合は、ビールとの相乗効果は抜群です。塩コショウでシンプルに味付けしたハツでも、ビールの爽快感が旨味に加わり最高。次の一口へと誘います。キンキンに冷えたビールを片手に、牛ハツを味わえば、至福のひとときを過ごせること間違いなしです。
牛ハツ(心臓)に合うお酒:赤ワイン
牛ハツは、淡白ながらも独特の歯ごたえが魅力の部位です。その味わいを最大限に引き出すためには、赤ワインとのペアリングが最適です。
おすすめは、ミディアムボディからフルボディの赤ワイン。果実味は控えめで、タンニンの渋みがしっかりと感じられるものを選ぶと、牛ハツの淡白な旨味と心地よい食感が引き立ちます。
例えば、ボルドー地方の赤ワインや、イタリアのキャンティ・クラシコなどは、牛ハツとの相性が抜群です。
牛ハツ(心臓)に合うお酒:白ワイン
牛ハツは、淡白な味わいながらも独特の風味が魅力ですが、実は白ワインとの相性が抜群です。特におすすめなのは、樽熟成されたシャルドネ。樽由来の香ばしさとコクが、ハツそのものの味わいを引き立て、より奥深い味わいを堪能できます。
シンプルな塩コショウで焼き上げたハツにはもちろん、ハーブや香味野菜を使ったアレンジにも、シャルドネの豊かな果実香と風味がぴったりです。例えば、ローズマリーやタイムで香り付けしたハツとシャルドネを合わせれば、ハーブの爽やかさが加わり、より洗練されたマリアージュを楽しめます。
牛ハツ(心臓)に合うお酒:日本酒
牛ハツの淡白でさっぱりとした味わいは日本酒にもよく合います。特に、キレのある辛口の日本酒を選ぶことで、香辛料の風味をさらに引き立て、ハツの旨味をより一層感じることができます。例えば、キリッとした味わいの「純米吟醸酒」や、すっきりとした後味の「辛口純米酒」などがおすすめです。
また、ハツの濃厚な旨味を引き出すために、あえて旨味の強い日本酒を選ぶのも良いでしょう。コクのある「純米酒」や、熟成香が楽しめる「古酒」などは、ハツの味わいに深みを与え、より一層料理を引き立ててくれます。
牛ハツ(心臓)に合うお酒:焼酎
牛ハツと抜群の相性を誇るのが、日本の国民的お酒である焼酎です。特に、甘味と旨味のバランスに優れた芋焼酎は、牛ハツの味わいをさらに引き立てます。
例えば、塩コショウでシンプルに味付けしたハツの串焼きには、芋焼酎の芳醇な香りが最高のマリアージュを生み出します。また、飲み口がまろやかな芋焼酎を選べば、ハツの旨味をより一層引き立て、箸とグラスが止まらなくなることでしょう。
牛ハツのおすすめレシピ:牛ハツのステーキの作り方
牛ハツを使ったおすすめのレシピとして、牛ハツのステーキをご紹介します。牛ハツステーキは、シンプルながらも奥深い味わいを堪能できる調理法です。
[材料](2人分)
- 牛ハツ焼き肉用:200g
- 長ねぎ、茎と葉:各10㎝位
- にんにく:1かけ
- オリーブオイル:小さじ2
- 塩:小さじ1/2
- 黒こしょう:適宜
作り方
- 長ねぎを薄い小口切りに、にんにくは薄切りにして、中心の芽を外しておきます。 にんにくの芽は、焦げやすく苦味が出やすいので、取り除くことで、風味がまろやかになります。
- 牛ハツは脂が多くついている場合は、余分な脂肪を切り取ります。反対側には薄い膜があるため、これも丁寧に取り除きましょう。
- フライパンにオリーブ油とにんにくを入れ、中火で加熱します。にんにくが泡立ち始めたら、弱火に切り替えます。
- このとき、フライパンを少し傾け、オイルとにんにくを端に寄せます。にんにくがきつね色になるまでじっくりと揚げ、フライドガーリックになったら取り出します。これで香り豊かなガーリックオイルが完成します。牛ハツはこのオイルを使って焼くことで、風味が一層引き立ちます。
- 牛ハツに塩と黒こしょうをふりかけ、下味をつけます。フライパンを強めの中火で熱し、十分に温まったら牛ハツを入れて焼き始めます。焼き目がついたらひっくり返し、もう片面にも同様に焼き目をつけます。
香ばしく焼けたガーリックオイルで表面をカリッと焼き上げ、中はレアに仕上げた牛ハツのステーキ。焼き目の香ばしさとサクッとした歯ごたえがたまらない一品です。牛ハツはしっかりとした旨味を持ちながら、あっさりとした味わいでサクサクとした食感とジューシーなかみごたえを楽しめます。
牛ハツステーキは、お酒との相性も抜群です。ビールやワインと共に、ちょっと贅沢な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
牛ハツは牛の心臓の部位で、独特の歯ごたえと風味が魅力。焼肉店では希少部位として人気が高く、100gあたり約17gのタンパク質を含む栄養価の高さも特長です。
牛ハツはクセのない味わいと独特の食感も人気の要因のひとつ。美容と健康にも良いとされ、栄養価の高さから疲労回復や貧血予防にも効果が期待できます。
食感と旨味、癖のなさから幅広い方におすすめできる牛ハツ。ぜひ焼き肉屋さんやホルモン屋さんなどで楽しんでみてください!