牛肉は栄養豊富で食べごたえのある味わいで美味しいですよね。一方で、独特の臭みが気になるという方も多くいらっしゃることでしょう。
その臭いの正体とは何か、そしてどうすれば上手に消せるのか。
この記事では、牛肉特有の臭みを取り除く秘訣をご紹介します。さらに、臭いのあるお肉を使う際の美味しく食べるポイントも探っていきます。
臭みの原因を理解し、効果的な対策を駆使することで、いつもの牛肉がもっと美味しくなること間違いなしです!
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牛肉の臭い(におい)の原因とは?
牛肉の臭いの原因は、主に
- 飼料(牧草)
- 牛肉の品種(和牛・ホルスタイン・外国産など)
- 食べる部位
などによるものです。臭いが気になって食べて良いのかわからないという時でも適切な処理をすることで美味しく食べられるケースもあります。それぞれの臭いの原因について解説します。
牛肉が臭う主な理由は飼料(牧草)
牛肉が臭う主な理由は、飼料(牧草)にあります。牛が食べる飼料によって、肉の臭いや風味が左右されるのです。特に牧草を主食とする牛は、その香りが強く肉へ影響を与えることがあります。
オーストラリア・ニュージーランド産などの牛肉は比較的、自然に近い環境で放牧して飼育し、飼料も牧草です。このような牧草で育てられる牛はグラスフェッドビーフと呼ばれ、栄養価が高いものの独特な匂いをしています。
一方で日本やアメリカ産は穀物で育つ牛肉が流通することが多く、それほど臭いがきになることはありません。
牛肉の品種による臭みの違い(和牛・ホルスタイン・外国産など)
和牛、ホルスタイン、外国産などの牛肉の品種によっても、臭みには違いがあります。和牛は脂肪の質が良く、香りにも独特の甘みがありますが、ホルスタインは乳臭さが残ることがあります。
一般に和牛と表記されないけれど国産と表記される牛肉はホルスタイン、もしくはF1と呼ばれる和牛とホルスタインを交配した牛肉になります。
また、外国産のグラスフェッドビーフは飼育環境や飼料の違いによって独特な臭みが感じられることがあります。
部位によって臭みが強い場合も
牛肉は部位によって臭みが強い部位もあります。
例えば、
- 牛タン
- ハツ
- レバー
- ミノ
- センマイ
- フワ
- ハラミ
- サガリ
- 白モツ
などの内蔵肉にあたる部位は、特有の臭みがあります。血生臭さが残る部位もあるため、調理する際には臭みを取る工夫が必要です。
臭い牛肉の見分け方
牛肉は部位や品種により、独特の臭みがあります。そして保存方法によっても臭みを感じられやすくなることをご説明しました。これらはいわば「匂いのクセ」とも言えるものですが、保存状況などによっては本当に腐敗している場合があります。
そこでここでは
- 見た目と匂いで判断するポイント
- 臭みと腐敗の違い
について解説します。
見た目で判断するポイント
新鮮な牛肉は淡い赤色でつやがあります。触れたときにヌルヌル感がなく、弾力があり、臭いも牛特有の香りがする程度です。苦手な匂いがしていたとしても、腐敗臭や酸っぱい臭いがすることはありません。
一方、牛肉はいたんでくると黒ずみがでてきます。黒っぽい部分が多い場合や、全体的に灰褐色になっていたら要注意。匂いも確認してから調理したほうが良いでしょう。
黄色く変色していたり、カビが生えている場合は、絶対に食べないでください。色が良くても、表面に強いぬめりがあったり、ドリップ(肉から出る赤い液)に粘り気があるなら雑菌が繁殖している可能性があります。食べるのはやめておきましょう。
腐敗と臭みの匂いの違い
腐敗と臭みの違いについて理解することは、食材を適切に扱い、安全に食べるために重要です。腐敗は食材が腐ってしまうことであり、微生物の繁殖や分解によって起こります。酸っぱいような臭いや、アンモニア臭がしたら腐敗が進んでいる可能性が高いです。食べられるのはやめましょう。
一方、臭みは食材が持つ特有の匂いです。牛肉の場合は飼料や品種によって異なる臭いがしますが、食べる上での個性のようなもの。適切に下処理をすることで、美味しく食べることができます。
牛肉の臭みを取る効果的な方法10選
牛肉の臭みを取る効果的な方法は様々あります。例えば、
- 酒・ワイン
- 重曹
- 炭酸水
- すりおろした玉ねぎ
- すりおろしたフルーツや果汁
- 生姜やネギと共に茹でこぼし
- ハーブ・スパイス
- ヨーグルト
- 牛乳
- 水で洗う・湯通しする
などです。ここからは、家でも手軽にできる牛肉の臭み消しの方法を解説します。
①酒・ワインへ漬け込んで臭いを取る
酒やワインは、短い時間で牛肉の臭みを取り除きながら、同時に風味豊かな味わいを加えることができます。特に牛肉と赤ワインは、その相性の良さから多くの料理で使われる組み合わせ。
使用する際の注意点として、焼酎のように強い香りを持つ酒類は避け、風味が穏やかな赤ワイン、日本酒、料理酒を選ぶことのがおすすめです。また、肉を漬けた後のお酒は直接飲むことはできませんが、ソース作りや煮込み料理に再利用することで、無駄なく美味しさを引き出せます。
- 肉を酒やワインに15〜30分ほど漬け込む
- クッキングペーパーなどで水気を拭き取って調理する
シンプルな手順で、肉本来の美味しさを最大限に引き出しつつ、臭みを取り除くことができます。
この方法は、特に赤身肉やスジ肉を使用するビーフシチューや、牛ほほ肉の煮込みなど煮込み料理に適しています。短時間で臭み取りと風味づけが同時に行えるので、手軽に料理を美味しく仕上げることができます。
②重曹で臭いを取る
重曹を使う場合のメリットは時短。短時間でできますが一方で、使用量には注意が必要です。適量を超えると肉に苦味がでたり、漬け込み時間が長すぎると肉の旨味も失われてしまいかねません。
- 重曹小さじ1、塩こさじ1を水200~300ccに溶かす
- 肉を①に入れて30分~1時間程度おく
- ざるに上げ軽く水で洗い流す
- キッチンペーパーなどで水気を拭きとり調理する
重曹は炭酸水素ナトリウムとも呼ばれ、臭み消しやアク抜き、肉を柔らかくする効果があります。
また、肉を漬け込む前にフォークで穴を開ければ、より溶液が肉に浸透しやすくなります。重曹が手元にない時は、ベーキングパウダーで代用もできます。
③炭酸水に漬け込む
炭酸水を使った牛肉の下処理は、家庭で手軽にできる方法の一つです。こちらも短時間で牛肉の臭みをとれて、肉質を柔らかくすることも魅力。炭酸水の炭酸水素ナトリウムが臭い成分を吸着し、同時に肉のタンパク質を効果的に柔らかくします。
- 牛肉を炭酸水が入った容器に浸します。
- 15分~1時間漬け込む
- クッキングペーパーなどで水気を拭き取って調理する
牛肉を浸す時は炭酸水で完全に覆うことがポイントです。
炭酸水の利用は、無味無臭のものだけでなく、コーラやオレンジソーダなどのフレーバー付き炭酸水を使う調理法もあります。コーラには数種類のスパイスが含まれているので独特の風味が加わり、料理の幅が広がりますよ。
④すりおろした玉ねぎで臭い取り
玉ねぎに含まれるプロテアーゼという酵素には、臭みを取り除き、タンパク質を分解して肉を柔らかくするはたらきがあります。
- 玉ねぎをすりおろすか、細かく刻む
- ジップロックなどを用意し①と牛肉を一緒に入れ漬け込む
- 冷蔵庫で15分~2時間ほど寝かせる
- 表面について玉ねぎをヘラなどで落とす
- クッキングペーパーなどで水気を拭き取って調理する
これだけで牛肉の臭みが抜け、驚くほど柔らかくなっているはずです。
さらにすりおろし玉ねぎは漬け込んだ後も使えるので、無駄になりません。使用後の玉ねぎはソースにしたり、炒めて煮込みのベースにしてもOKです。例えば、ステーキ、ソテー、カレーやシチューなど、幅広く使えます。
すりおろす手間はかかりますが、柔らかくて旨味のギュッと詰まった1ランク上の美味しい牛肉料理を味わえますよ。
⑤すりおろしたフルーツや果汁へ漬け込む
すりおろしたフルーツや果汁を使う方法もあります。これは、玉ねぎと同様、特定のフルーツにもプロテアーゼが含まれるからです。特に、パイナップル、キウイ、りんごが有効で、フルーツの爽やかな香りも加わりおすすめです。
- すりおろしたフルーツか果汁100%のジュースを用意する
- ジップロックなどを用意し①と牛肉を一緒に入れ漬け込む
- 冷蔵庫で15分~2時間ほど寝かせる
- 表面についてフルーツをヘラなどで落とす
- クッキングペーパーなどで水気を拭き取って調理する
ただし、この方法はどのフルーツでも良いわけではないためご注意ください。時間に余裕がある時に前もって準備をしておくと良いこの方法は、特に大切な日の料理に向いています。肉の質を向上させ、食卓を豊かにするために、ぜひ試してみてください。
⑥生姜やネギと共に茹でこぼし・下茹でで臭い取り
特に牛すじや牛モツで行う臭みとりの方法が、茹でこぼしです。茹でこぼしを行うことで牛本来の味を引き出し、料理の質を向上させることができます。
牛すじとモツで手順は異なるので、牛すじを例に紹介します。
- たっぷりの水を入れた鍋に牛すじ肉を入れ、沸かす
- 沸騰して2~3分茹でたあと、ざるにあげる
- 流水で肉の表面の汚れを洗い流す(鍋もアクが付いているため、洗う)
- 水、皮付きの生姜スライス、長ねぎの青い部分、肉を入れ、沸かす
- 沸騰したら弱火にし、約1時間半から2時間を目安に下茹で
※アクが出たらお好みですくい取り、水が減ったら足す
これをすることで牛すじの臭みがとれ、プルプルのコラーゲン質が美味しい煮込み料理が楽しめます。牛すじ肉の部位によってはゆで時間が異なることもあるため、腱や筋の部分が十分に柔らかくなるまで様子を見ながらゆでることが重要です。
牛もつの場合、塩もみ・水洗いをして臭み抜きをした後、5~10分程度ふきこぼして下準備するのが一般的です。
⑦ハーブ・スパイスを活用する
ハーブやスパイスは臭み消しだけでなく、牛肉の風味を引き出し、料理に深み・複雑さを加えてさらに美味しくしてくれます。様々なハーブやスパイスを組み合わせることで、無限の味わいのバリエーションを生み出すことができますよ。
ただし、香り高いハーブ・スパイスは品質の良いものほど高価な場合が多い点がデメリット。それでも、基本的なものを揃えておけば、多くの料理に応用できます。
ここでは幅広く使える基本のハーブやスパイスで、ローストビーフやステーキなど、比較的大きめなサイズの肉をマリネする方法を紹介します。
- にんにく2欠けを包丁の側面で押しつぶす
- マリネ液を作る。
ローズマリー1枝、タイム1枝、
皮付きのにんにく、オリーブオイル50ccをあわせる - 冷蔵庫から出した牛肉に塩適量(肉の重量の1%の量)をふる
- マリネ液に牛肉をつけ、軽くもみこんでなじませる
- 30~1時間かけて牛肉を常温にもどす(この時に香りが移ります)
- マリネ液から取り出し、オイルをきって調理する
これだけで牛肉の臭みは消え、上品な香りの美味しい牛肉料理が楽しめます。
他に煮込み料理、ひき肉料理など、調理法によっても使用するスパイスや下処理は変わりますが、ハーブやスパイスを使った臭み取りは、牛肉料理をより美味しくする簡単で効果的な方法です。
少しの手間を加えるだけで、家庭の食卓が一層豊かな味わいに満ちることでしょう。
⑧ヨーグルトに漬け込む
牛肉の臭みを取る効果的な方法の1つとして、ヨーグルトに漬け込む方法があります。ヨーグルトには乳酸菌が豊富に含まれており、これが臭みを中和し、タンパク質を分解することで肉を柔らかくします。
- ジップロックなどを用意しヨーグルトと牛肉を一緒に入れる
- よく揉み込んでなじませる
- 冷蔵庫で1時間~1晩寝かせる
- 調理前は流水で軽くヨーグルトを洗い流す
- クッキングペーパーなどで水気を拭き取って調理する
洗い流すのは少しもったいないですが、オーブン焼きなど調理法によってはヨーグルトを漬けダレとして利用することもできます。
ヨーグルトの酸味が牛肉の臭みを和らげ、まろやかな仕上がりなりますよ。ぜひ、ヨーグルトを活用して臭みの気にならない美味しい牛肉料理を楽しんでみてください。
⑨牛乳に漬け込む
ヨーグルトがない場合は牛乳でも牛肉の臭みとりができます。牛乳にはカゼインというタンパク質が含まれています。このカゼインは様々な物質を吸着する性質を持っていて、臭み消しに効果的です。
- ジップロックなどを用意し牛乳と牛肉を一緒に入れる
- 冷蔵庫で1時間~2時間つけ置く
- クッキングペーパーなどで水気を拭き取って調理する
ほとんどの家庭に常備されている牛乳を使った、とてもシンプルな臭いとりの方法です。
牛乳に含まれるカゼインは非常に細かい粒子状になっているため、肉の隙間に入り込みやすく、臭みを効率的に吸着します。時間をかけてじっくり漬け込むことで、より臭みを取り除くことができるため、事前の準備に余裕がある時に試してみる価値があります。
ただし、牛肉を漬けた牛乳は飲めないので、捨てることになってしまい勿体ないというのがデメリットです…
⑩水で洗う・湯通しする
水やお湯を使って牛肉の臭みを取り除く方法もあります。ただし、この方法は薄切り肉には使えません。バラなど薄い肉は他の臭み取りの方法を試した方が良いでしょう。
水を使う場合は、冷水を使用して肉を軽くなで洗いすることから始めます。臭みが特に強い部分があれば、その部分を包丁で削ぎ落としても良いかもしれません。
一方、お湯を使う場合は、60度程度のお湯に肉を2〜5分間浸し、洗います。60度あれば、雑菌の繁殖を防げる温度で臭み消しが行えます。イメージとしては、湯通しに近い感じです。
またどちらの方法も、洗い過ぎはNG。洗い過ぎると、肉の旨味成分まで流れ出てしまう恐れがあるため、適度な時間で洗うことが大切です。簡単で手軽な方法なので、忙しい方や、BBQなどのアウトドアイベントでも採用しやすいでしょう。
牛肉の臭みを抑えて美味しく食べられるレシピ
ここでは臭みやクセの強い匂いがする牛肉を美味しく食べるためのレシピを紹介します。
市販のルウで本格ビーフカレー
市販のルーでもビーフカレーなら様々なスパイスによって臭みを抑えて牛肉の風味を味わえます。ビーフを使うことでちょっとリッチな気分もしますね。
下準備の時には赤ワインにハーブ・スパイスを混ぜてマリネすると、臭み消しだけでなく奥深い香りを楽しむことができます。
牛肉の青椒肉絲(チンジャオロース)
生姜やを使う青椒肉絲もおすすめです。ピーマン、たけのこなど香り高い野菜も一緒に炒めるので、臭みを感じることはほとんどないと思います。さらに、醤油やオイスターソースなどの調味料もコク深く、香りに加わるので、牛肉の旨味をしっかりと感じることができます。
おろし玉ねぎで作るシャリアピンステーキ
帝国ホテルで生まれた歴史ある料理、シャリアピンステーキは牛肉の臭み消し、柔らかさや旨味を引き出す魅力的なレシピです。たっぷりのすりおろした玉ねぎを牛肉になじませ、ラップで密封してマリネする調理法。
マリネした玉ねぎはバターと共にソースに仕上がり、牛肉の凝縮した旨味を堪能できます。
牛ほほ肉の赤ワイン煮込み
牛肉を赤ワインやハーブと共に漬け込み、一晩寝かせて煮込む赤ワイン煮込みもおすすめです。
赤ワインによって臭みを消せるだけでなく、じっくり煮込むことでほろりとほどけるように柔らかな食感を楽しめます。アツアツの1皿は見た目も華やぎますし、夕食にぴったりです。
臭みをださないために:すぐ食べない場合は保存方法を変える
また、牛肉は鮮度が落ちると臭いが強くなるため、冷蔵・冷凍保存でも注意が必要です。
- 冷蔵保存する時のポイント
- 冷凍保存する時のポイント
それぞれにポイントがあります。
購入後すぐに食べない場合は保存方法に気をつけて臭い対策をしましょう。
冷蔵保存する時のポイント
保存容器やラップでしっかりと密封することで、他の食材との臭いの移りも防げます。
保存方法によって臭いが強くなることもあります。例えば、ジップロックなどの密封袋にそのまま入れて保存すると、肉汁が溜まってしまい、臭いの原因となります。そのため一度水分を拭き取ってラップでしっかりと包んで保存することが重要です。
冷蔵保存で牛肉を消費する際の目安期間は3~7日です。また、冷蔵庫内にチルド室があるならチルド室を使い、なるべく早く使うことがおすすめです。
冷凍保存する時のポイント
また、牛肉を冷凍保存する場合も注意が必要です。冷凍庫での保存は、冷凍焼けなどによって特有の臭いがでてしまうことがあります。冷蔵と同様、表面の水分をできるだけとり、ラップで包んでからジップロックなどに入れて冷凍することで、臭いの影響を抑えることができます。この時になるべく平たくなるようまとめると、解凍が素早くできます。
金属トレーがある方は、金属トレーにのせて冷凍・解凍するのもおすすめです。金属トレーを使うと素早く冷凍ができるので、臭いの原因となるドリップの流出を伏せtげます。
また、下処理をした後で冷凍したり、調理したものを冷凍する、という保存方法もおすすめです。
冷凍なら1~2ヶ月は保存していてもくさみがでないので、忙しい方にも安心です。
臭みの気になる牛肉も調理法で美味しく
牛肉の臭いの原因や、臭み取りの方法、臭みをおさえて美味しく食べられるレシピをご紹介しました。
食べている餌や品種、部位などによって臭いの出方が異なる牛肉。
ですが、
- 臭みを取る下処理や調理方法
- メニュー選び
- すぐ使わない時の保存方法
などによって臭み対策ができます。牛肉を購入した際や臭いが気になった際、この記事がお役に立てれば幸いです。