「ハチノス」は牛の第二胃からとれるホルモンです。その名の通り形はハチノスに似たユニークな形をした部位となっています。また、栄養価も非常に高く、様々な魅力のある部位です。
今回はこのハチノスの部位や味、食感、他の部位との違いなどについて詳しく解説していきます!
ハチノスってどこの部位?
ハチノスは、牛の4つある胃の中で第二胃に位置する特殊な部位です。その名前の由来は、内壁に蜂の巣のような六角形の模様が並んでいることから来ています。この独特の構造が、ハチノスの魅力的な食感を生み出す秘密なのです。
未処理の状態のハチノスは、表面が黒く見えます。しかし、丁寧に磨き上げると、美しい白色が現れます。この色の変化は、ハチノスの加工過程における興味深い特徴の一つといえるでしょう。
ハチノスは、牛一頭からわずか1kg程度しか取れない希少部位です。この希少性ゆえに、一般のスーパーマーケットで見かけることは稀で、専門の精肉店やホルモン料理店でしか手に入らないことが多いのが現状です。
ハチノスの味・食感
ハチノスは、独特の歯ごたえとあっさりとした味わいが魅力です。丁寧に下処理をすれば、硬さは気にならなくなり、厚みのある肉本来の食感が楽しめます。表面の黒い皮を剥ぐことで、臭みも抑えられます。
味わいは淡白ながら、ホルモン特有の旨味が口の中に広がります。コラーゲンも豊富なので、美容に関心の高い方にもおすすめです。
ハチノスは、淡白な味付けなので、タレとの相性が抜群です。煮込み料理にすれば、さらに旨味が染み込みます。
ハチノスのカロリーと栄養価
ハチノスは、美容と健康に嬉しい栄養素がたっぷり詰まった食材です。コラーゲンは、肌に弾力を与え、ぷるぷるした若々しい印象を与えてくれます。さらに、ハチノス100gあたり186kcalと低カロリーなので、ダイエット中の方にもおすすめです。同じ量の和牛肩ロース赤身肉と比較すると、100kcal以上もカロリーを抑えられます。ホルモンの特徴でもある高タンパクな点もポイントで。100gあたり12.4gのタンパク質が含まれています。
また、健康維持に欠かせないビタミンB12も豊富。ビタミンB12は、新しい細胞を作るために必要な栄養素である葉酸と一緒に、赤血球を作り出す働きがあります。不足すると貧血や疲労の原因となるため、積極的に摂取したい栄養素です。
さらに、免疫力アップに効果的な亜鉛も含まれています。亜鉛は体内で作ることができないため、食事から摂取する必要があります。ハチノスは、おいしく手軽にこれらの栄養素を摂取できる、まさに美容と健康の味方といえるでしょう。
他のホルモンとの違い
あっさりとした味わいと栄養価が特徴のハチノスですが、その他のホルモンとの違いが気になりますよね。ここでは同じ牛の胃からとれるホルモン
- ミノ(第一の胃)
- センマイ(第三の胃)
- ギアラ(第四の胃)
ミノ(第一の胃)
ミノは、牛の第一胃袋にある筋柱部分です。そのため、他の部位に比べて肉厚で弾力性があり、独特の歯ごたえを楽しめるのが特徴です。
ミノは淡白な味わいで、白モツの中では臭みが少なく食べやすいのも魅力です。焼肉として網焼きにすると旨味が溢れます。
ミノを美味しく食べるには、焼き方が重要です。網焼きで焼く場合は、パサつかないように転がしながら焼きましょう。また、加熱前に細かく切れ目を入れておくと、火が通りやすくなるだけでなく、焼いたときに切れ目が開くため、食べ頃の目安にもなります。
ミノには、脂肪が少ないながらもタンパク質、ミネラル、ビタミンをバランス良く含んでいるのも嬉しい点です。
また、ミノに甘い脂が挟まっている部分は「ミノサンド」と呼ばれ、より希少価値が高く珍重されています。濃厚な味わいが楽しめると人気です。
センマイ(第三の胃)
牛の第三胃であるセンマイは、黒っぽい見た目と独特の歯ごたえが特徴です。その見た目とは裏腹に、あっさりとした味わいで、センマイ刺しのコリコリとした食感が人気です。ホルモンの中でも低カロリーで、鉄分やコラーゲン、亜鉛といった栄養素が豊富に含まれているのも嬉しい点です。
センマイは、しっかりと湯引きすることで灰色の皮を取り除き、白センマイとして食べることもできます。湯引きによって臭みが抑えられ、より一層、センマイ本来の美味しさを楽しむことができます。白センマイは、タレとの相性が抜群なので、様々な味付けで楽しむのもおすすめです。
ギアラ(第四の胃)
牛の第四胃であるギアラは、「赤センマイ」という別名を持つほど赤みがかった色合いが特徴です。内壁には大きなヒダがあり、これがコリコリとした独特の歯ごたえを生み出します。
他の胃袋と比べても脂肪が多く、噛めば噛むほど濃厚な旨みが溢れ出す部位と言えるでしょう。焼肉として楽しむのはもちろん、煮込み料理やもつ鍋など、様々な調理法でその美味しさを味わえます。特に、肉厚で脂の乗った「ギアラ芯」は、その味わいの濃さから人気を集めています。
ハチノスの美味しい食べ方
ハチノスを美味しく食べるための調理法をいくつかご紹介します。
- ハチノスの調理法①焼肉
- ハチノスの調理法②煮込み
- ハチノスの調理法③刺し身
ハチノスの調理法①焼肉
ハチノスの醍醐味であるホルモン特有の旨味を存分に味わいたいなら、焼肉がおすすめです。最近の焼肉店では、生のハチノスではなく、ボイルなどの下処理済みを提供するのが一般的です。
下処理済みなので、強火でさっと炙るように焼けば、香ばしい香りが食欲をそそります。表面に美味しそうな焦げ目がついたら食べ頃です。
炭火で焼くと、さらに香ばしさが増し、さっぱりとした味付けでも、ハチノス本来のもつ旨味をしっかりと感じられます。噛めば噛むほど、ハチノスの独特の食感が口の中に広がり、たまらない美味しさです。
ハチノスの調理法②煮込み
ハチノスは、じっくりと煮込むことで、独特の弾力がハラミのような、やわらかく歯切れのよい食感に変化します。煮崩れしにくいという特徴から、長時間煮込んでも味が染み込みやすく、噛めば噛むほど肉の旨味を堪能できます。
このため、世界各地でハチノスを使ったバラエティ豊かな煮込み料理が誕生しました。中でも、イタリアのトリッパはトマトで煮込んだハチノスの煮込み料理として有名で、日本でも広く親しまれています。
ハチノスの下処理と捌き方
下処理前のハチノスを手に入れたら、ぜひ自分で下処理をしてみましょう。ホルモンであるハチノスを美味しく味わうためには、まず臭みをしっかり取り除くことが大切です。下処理前のハチノスは黒っぽい薄皮に覆われており、「黒ハチノス」とも呼ばれます。この薄皮を丁寧に取り除くことで、淡白なハチノスの旨味を最大限に引き出すことができます。
①ハチノスを茹でて皮をむく
大きめのボウルに黒皮を上にして並べ、48度前後のお湯を浸るくらい注ぎ、5分間下茹でします。
汚れたお湯を捨てたら、75度くらいのお湯で2分ほど茹でます。
②黒皮を取り除く
やわらかくなった黒皮をスプーンでこそぎ取ります。この作業はハチノスが温かい状態で行うと、皮が硬くならず剥きやすいです。火傷に注意しながら、黒い部分が白く変わるまでしっかりと取り除きましょう。
③薬味と一緒に再度茹でる
皮を取り除いたハチノスを、たっぷりの水を入れた鍋に生姜やネギの青い部分と一緒に入れて茹でます。茹で時間の目安は約1時間です。吹きこぼれないように注意しながら、しっかりと火を通してください。調理中には定期的にアクを取り除き、ハチノスが柔らかくなるまで茹で続けます。
④ハチノスを食べやすいサイズにカットする
茹で終えたハチノスを冷水でしめ、調理方法にあわせた大きさにカットします。端のほうに少し膨らんだコブのようなものがあることがありますが、これは「ハチコブ」や「ヤン」と呼ばれる、ハチノスと3番目の胃「センマイ」をつなぐ部位です。非常においしい希少部位なのでぜひ召し上がってください。
ハチノスは肉厚なので、一口大にした後、表面にいくつか切れ込みを入れておくと食べやすくなります。カットする際の大きさの目安としては、焼肉用には3cm×4cm程度。あまり大きすぎると歯ごたえが強くなり、食べにくくなります。刺身の場合は幅を狭め、短冊状にカットするのが良いでしょう。
ハチノスをカットする際のポイントは、食べやすさと調理方法に合わせたサイズにすることです。適切なサイズにカットすることで、料理の仕上がりが一層美味しくなります。
ハチノスのおすすめレシピ
ハチノスのおいしい調理法は解説しましたが、ここではあらためてハチノスの持ち味が活きるおすすめのレシピとして
- もつ煮込み
- トリッパ
- ハチノスナムル
の作り方をご説明します。
もつ煮込みの作り方
もつは、新鮮なものが手に入ったらぜひとも挑戦したい、もつ煮込みにしても絶品の食材です。居酒屋の定番メニューとして人気ですが、実は家庭でも簡単に作ることができます。今回は、お酒のおつまみにもご飯のおかずにもなる、ピリ辛仕立てのもつ煮込みのレシピをご紹介します。
使う材料は、牛もつ(今回はハチノスを使用)、ニンニク、生姜、ごま油、豆板醤、料理酒、だし汁、味噌、お好みで刻み唐辛子、白髪ネギです。
鍋に火をかけ、ごま油をひいて熱します。そこに、みじん切りにしたニンニクと生姜を入れ、弱火でじっくりと炒めます。香りが立ってきたら、豆板醤を加え、さらに炒めます。豆板醤の量は、お好みで調整してください。
次に、下処理したハチノスを鍋に入れます。強火で炒め、表面に焼き色をつけます。
ハチノスに焼き色がついたら、料理酒とだし汁を加えます。沸騰したらアクを取り除き、味噌を溶かし入れます。弱火にして蓋をし、1時間半から2時間ほど煮込みます。
じっくりと煮込んだら、器に盛り付け、お好みで刻み唐辛子や白髪ネギを添えれば完成です。
今回はハチノスを使いましたが、他の部位を使ったり、こんにゃくや大根などの野菜を加えても美味しくいただけます。自分好みの具材で、オリジナルのもつ煮込みを作ってみてはいかがでしょうか。
トリッパ(ハチノスのトマト煮込み)の作り方
イタリアの家庭料理として親しまれている「トリッパ」は、牛の第二の胃袋「ハチノス」を香味野菜とトマトでじっくり煮込んだ料理です。独特の食感とトマトの酸味、香味野菜の風味が溶け出したスープは、一度食べたら忘れられない美味しさです。
用意するものは、下処理済みのハチノス500g、玉ねぎ1個、人参1本、セロリ1本、パプリカ1/2個、ニンニク2かけ、トマトホール缶1缶(400g)、ローリエ2枚、コリアンダー小さじ1/2、塩胡椒適量、オリーブオイル大さじ2です。お好みで仕上げにパセリや粉チーズ、オリーブオイルをかけてください。
まず、玉ねぎ、人参、セロリ、パプリカ、ニンニクをみじん切りにします。ハチノスは5cmほどの長さに切っておきましょう。
鍋にオリーブオイルとニンニクを入れ、弱火で熱します。香りが立ってきたら、玉ねぎ、人参、セロリ、パプリカを加え、しんなりするまで炒めます。
トマトホール缶を潰しながら加え、さらに炒めます。全体が馴染んだら、ハチノス、ローリエ、コリアンダー、塩胡椒を加え、弱火で1時間半ほどじっくり煮込みます。
圧力鍋を使う場合は、材料を全て入れて30分ほど加圧すれば、より短時間で柔らかく仕上がります。
煮込んだら器に盛り付け、お好みでパセリや粉チーズ、オリーブオイルをかけたら完成です。パンと一緒にスープまで味わうのがおすすめです。赤ワインとの相性も抜群なので、ぜひお試しください。
ハチノスナムルの作り方
ハチノスを使った「ハチノスナムル」のレシピを紹介します。ハチノスナムルは、茹でたもやしと下処理済みのハチノス、きゅうりをごま油、塩、砂糖、酢で和えるだけの簡単な一品です。ご飯のおかずにはもちろん、お酒のおつまみにもぴったりです。
きゅうりやハチノスは、もやしと同じくらいの細長い形状にカットすることで、味が馴染みやすくなるだけでなく、見た目も美しく仕上がります。シャキシャキとしたもやしとコリコリとしたハチノスの食感の違いを楽しむのもおすすめです。
ごま油の香ばしい香りと、酢の酸味が食欲をそそり、箸が止まらなくなること間違いなしです。お好みで、唐辛子やにんにくを加えても美味しくいただけます。
希少部位ハチノスの入手方法
ハチノスは、牛の第二胃袋と呼ばれる希少部位で、独特の食感と風味が魅力ですが、一般的なスーパーマーケットや焼肉店では、なかなかお目にかかれないのも事実です。もし、どうしてもハチノスを食べてみたいという場合は、通販を利用するのがおすすめです。
通販なら、注文するだけで自宅にハチノスが届くため、手軽に味わえます。通販サイトの中には、国産黒毛和牛のハチノスのみを取り扱う専門店もあるため、品質にこだわりたい方にもおすすめです。
さらに、冷凍ハチノスは、解凍するだけで調理できる手軽さも魅力です。ただし、購入する際は、レビューなどを参考に、鮮度や品質にこだわっているお店を選ぶようにしましょう。
ハチノスに合うお酒
ホルモンといえばお酒。そこで、ここではハチノスと合うお酒をご紹介します。
- ハチノスと相性が良いお酒:ハイボール
ハチノスと相性が良いお酒:ハイボール
ハチノスならではの食感と味わいを引き立てるには、ハイボールとのペアリングが最適です。香ばしく焼き上げたハチノスと、スモーキーな香りをまとったハイボールは、互いの個性を引き立て合いながら、至福のハーモニーを生み出します。
特に、塩コショウでシンプルに味付けしたハチノスには、ハイボールのすっきりとした味わいが相性抜群です。脂っこさを炭酸が洗い流し、ハチノスの旨味をより一層際立たせてくれます。また、味噌やコチュジャンを使った濃厚な味付けの場合でも、ハイボールの爽快感が口の中をリフレッシュしてくれるので、最後まで飽きずに楽しめます。
ハチノスと相性が良いお酒:日本酒
ハチノスは淡白な味わいが魅力ですが、日本酒の奥深い世界をさらに広げてくれます。
日本酒といっても、香りや甘味、余韻は多種多様。中でもハチノスと合わせるのであれば、すっきりとした飲み口で、香りとのバランスが取れたものがおすすめです。
例えば、キリッとした辛口の純米酒。ハチノスの旨味を際立たせつつ、後口を爽やかに洗い流してくれます。フルーティーな香りの吟醸酒もハチノスとよく合います。上品な香りとキレのある味わいが、ハチノスの新しい一面を引き出してくれるでしょう。
日本酒とハチノスの組み合わせを楽しむ際は、ぜひ温度にもこだわってみてください。冷酒で味わうスッキリとした爽快感も捨てがたいですが、ぬる燗にすることで、まろやかな口当たりとふくよかな香りが広がり、ハチノスの味わいをさらに深めてくれます。
ハチノスと相性が良いお酒:ワイン
イタリアやフランスで古くから愛されるハチノスは、実はワインとの相性が抜群です。ハチノス自体がさっぱりとした淡白な味わいのため、ワインも同様にすっきりとした飲み口の白ワインを選ぶのがおすすめです。繊細な香りの白ワインは、コラーゲンとホルモン由来の旨みを秘めたハチノスと互いを引き立て合い、至福のマリアージュを生み出します。
また、トマトで煮込んだトリッパには、トマト料理と相性の良い赤ワインが最適です。視覚的な美しさもさることながら、トマトの酸味とフルーティさが赤ワインの味わいと調和し、より深い味わいを堪能できます。赤ワインを選ぶ際は、ハチノスの淡白な味わいに寄り添う、ライトボディやミディアムボディのものを選ぶと良いでしょう。
まとめ:ハチノスの魅力と楽しみ方
今回は、独特の歯ごたえが特徴のハチノスについてご紹介しました。あっさりとした味わいで、噛めば噛むほど旨味を感じられます。コラーゲンも豊富なので、女性にもおすすめです。
インパクトのある見た目とは裏腹に、さっぱりとした味わいを楽しめるハチノスを、ぜひ一度味わってみてください。