低温調理器を使うと、肉が美味しく、いくらでも食べられてしまいますよね。
ですが、なぜ低温調理をすることで肉が美味しくなるのか?
その理由について解説します。
レストランで食べるローストビーフとか、外はこんがり、中は鮮やかな朱色で、ジューシーで臭みなく美味しいですよね?
あれは低温調理器を使わずとも、オーブンの温度と、肉の水分の気化による温度低下、その他諸々の「温度管理が直感で完璧にできる」という熟練の技によるものです。
そのため、練習していない人が家でステーキを焼いても「なんか硬くてパサパサ」という感想になり、レストランの味が再現できない、というわけなのですが・・・
では、その絶妙な温度管理ができると、どのようなことが起こっているのでしょうか。
肉とタンパク質の変性温度の話
低温調理ができると、肉がジューシーに美味しく仕上がるのか。
それには、肉に含まれるタンパク質に火が通る(変性する)温度が関係しています。
肉の旨みや柔らかさは、タンパク質が関係している
そもそも肉に多く含まれるタンパク質にはミオシン・アクチン・コラーゲンという3種類に分類されます。
これら3種に火が通った状態(変性と言います)になる温度は、それぞれ違っていて…
- ミオシン…50℃以上で変性し、弾力と旨味が増す
- アクチン…66℃以上で変性し、脱水と共にパサツキが出る
- コラーゲン…75℃以上でゼラチン化し、トロトロになる
という特徴があります。
要するに、ミオシンは味・滋味や旨味に関わる部分。コラーゲンは食感に関わる部分で、アクチンは、熱が強いと水分が飛んでパサパサしちゃう、というわけ。
この3種類のタンパク質を絶妙な加減で調理できると、美味しいお肉が食べられます。
それぞれについてより詳しく解説すると・・・
ミオシンの変性温度(火の通り)による変化
ミオシンというタンパク質は50℃以上で変成しだします。
ミオシンが変成すると肉に弾力が出て噛み切りやすくなり、最も柔らかい食感を楽しめます。
生の肉は、ムニャっとした食感で弾力がなく、あまり旨味も感じにくいと思うのですが、それが50℃以上の火入れで美味しくなっていくというわけ。
馬刺しやユッケなど、生肉も美味しいは美味しいですが、薄くスライスしてあったり、細かく刻んであったりすると思います。あれは、弾力のなく噛み切りにくい肉を美味しく食べるための調理法というわけ。お刺身なんかも、塊の生魚はとても噛み切れませんよね。
アクチンの変性温度(火の通り)による変化
アクチンは、65℃以上から変成しだします。
アクチンに火が入り、さらに68℃を超える温度になると、タンパク質の変性のみならず、脱水により、肉のパサツキがでてきます。
ローストビーフなどの低温調理のお肉は、このパサつきが出ない温度でじっくり熱を入れていくことから、ミオシンの変性により柔らかさ・弾力が出て、かつアクチンは変性せず、ピンク色のジューシーな赤身肉に仕上がるというわけ。
強火で長時間焼いたら、パサパサした肉になりますよね。
コラーゲンの変性温度(火の通り)による変化
肉には女性の大好きなコラーゲンも含まれています。
いわゆるスジの硬い部分がコラーゲンです。
コラーゲンは75℃以上で変成(ゼラチン化)します。
牛スジのような、筋感のある硬い肉も、長時間煮込むことでほどけるように柔らかくなりますよね。あの硬い筋が柔らかくなるのをゼラチン化と言います。
硬いスジの部分を柔らかくできる温度が、75℃以上程度から。
それぞれのタンパク質を美味しく仕上げる上で生じるジレンマ
先に肉の含むタンパク質3種類の変性する温度を解説しましたが、問題が一つあるの、気がつきましたか?
旨味が増すミオシンの火が入る温度は50℃。
肉を柔らかくするコラーゲンがとろける温度は75℃以上。
ですが、68℃以上で調理をすると、アクチンに火が入りパサつく…
というジレンマが生じます。
この問題を解決するのが低温調理です。
低温調理で、肉の旨味と食感を最高の状態に仕上げられる
というのも、コラーゲンは、厳密に言うと60℃程度でも長時間にわたり熱を加えることで、ゼラチン化が進んで柔らかくなる、という特徴があります。
そのため、60℃程度の低温で肉に長時間、熱を加えることができれば、
- ミオシンの旨味がギュギュッと濃縮
- アクチンは変性せず、柔らかいままジューシー
- コラーゲンはお口でとろける柔らかさ
という、最高の状態で肉を存分に味わえるのです。
それを可能にするのが、低温調理。すごいですよね。
プロはスチームコンベクションという専用のオーブンを使って低温調理したり、普通のオーブンでも、直感で低温調理と同じ条件になるよう肉に火入れすることができたりするのですが・・・
そんなプロと違わぬ美味しい肉料理を、素人でもできるよう生まれたのが低温調理器。
低温調理器なら素人でも完璧な温度管理ができる
低温調理器を使うと、誰でも真空パックした肉をお湯に突っ込んでおけば、美味しく仕上がるというわけ。
本当にただの豆知識ですが、なるほど、と思っていただけたら嬉しいです。
また、おすすめの低温調理器が知りたい!という方は、別の記事でご紹介していますので、そちらもあわせて是非、ご覧になってみてください。