今回はボディメイクしてる人やダイエッターにちょっと話題なHMBに効果ないっていう声について。
巷では飲むだけで普段の運動が筋トレ並に効果出るとか、飲むだけで筋肉がつくとかやばい広告もいっぱいあるので、ガッカリしちゃって全く効果がないっていう声があがったりするのも全くもって頷けます。
ある意味それは正しい反応だけど、HMBという栄養素についての誤解でもあると思うので、
なぜ「HMBには効果がない」となってしまうのか?
書いていこうと思います。
一応、HMBって何?という方にも親しめるよう簡単な説明もふまえつつGO。
HMBとは
まずはHMBについて。
HMBは和名だと3-ヒドロキシイソ吉草酸と言い、英名だとベータ・ヒドロキシ・ベータ・メチルブチレート(β-Hydroxy β-MethylButyrate)と言います。
ベータをとって頭文字にするとHMBです。
HMBは、BCAA(必須アミノ酸)のひとつ、ロイシンを代謝することでできる代謝物で、立派な栄養素です。
つまり、ロイシンを摂取すればHMBも体内でつくられます!しかし、それがロイシンを代謝した5%程しかつくれないため、サプリメントでの摂取が効率的です。
HMBの効果は大きくわけて2つ。筋肉がつきやすくする筋タンパクの合成促進と、筋肉が減らないようにする筋タンパクの分解抑制で、それを目的に摂取します。
In conclusion, supplementation with either 1.5 or 3 g HMB/day can partly prevent exercise-induced proteolysis and/or muscle damage and result in larger gains in muscle function associated with resistance training.
(結論として、1日1.5g、または3gのHMBの摂取は運動によるタンパク質分解や損傷を防ぎ、筋トレでの筋肉機能を大きく増加させました。)
また、ナマズ、グレープフルーツ、アルファルファといった食物にも少しだけ含まれる、立派な栄養素です。
なお、これを飲んだり食べたからといって、脂肪を分解したり筋肉を勝手に増やす効果はありません。
HMBサプリを飲んでも期待した効果がない・効かない!というケース
さて、ではこのHMBに効果がないと言われる理由はどのようなものがあると思いますか?
前提として、HMBへの認識が違うというのが大きいのかなと思います。
HMBはこういう効果があるから飲むんだ!と思って、期待した効果がなければガッカリしますよね。
そこで、HMBに期待されがちだけれど、実際にはない効果について説明します。
HMBに飲むだけで痩せる効果はない
広告で販売されるHMB商品には「飲むだけで痩せる!!!!!」かのような表現で購入を誘導するものも多いですよね。
残念ながらHMBサプリを飲むだけで痩せる日は永遠にやってきません。
HMBは栄養素の1種で、機能性食品に指定されるような成分でもないため、飲むだけ効果は期待できないんです・・
他に、HMBを飲むだけで脂肪が筋肉に変わり、痩せやすい体に、みたいな表現も見たことがある気がしますが、これもウソです。
脂肪が急に筋肉に変わることは人の体のつくり的にありえません。あくまでも摂取した栄養素が筋肉になっていくのですが、「脂肪→筋肉」の流れはないんです。
逆もまた然りで、筋肉が脂肪にクルンと変わることもまた、ありません。筋肉量が減ると、脂肪を蓄えやすい体になってしまう。
だから、筋肉を増やしたり、減らないようにする努力が重要なんです。
HMBを飲むと普段の運動が筋トレになる、という効果はない
これも良く見るんですが、飲むだけで歩いたり、階段の上り下りといった普段の運動が筋トレ並の効果になります!みたいな広告ありますよね。
僕そういう、やんわりホントっぽい要素を入れてくる商品大っ嫌いなんですが・・
これもウソなので、こういった効果を期待してしまうと「全然効果ないじゃん!」ってことになります。
これはEMSとかの電源オンにしたら自然に筋肉がブルブル動いちゃう系マシンでもそうなんですが…
もちろん、普段運動不足があまりに激しく、歩くだけで筋肉痛になっちゃうんだよね・・・というほどの方にとってはHMBの摂取も一定の効果は望めると思いますが、それはもうHMBとかいう前に散歩でもしてリラックスした方が良いかもしれません・・・とも思います。
また、HMBの摂取方法によって効果が出ない場合もあるので、そちらについても。
運動してもHMBに効果がないというケース
HMBは摂取して運動をしてもあまり効果が実感できないケースもあります。
これについても解説していきます。
そもそもタンパク質が足りず効果が発揮されない
まず1番に考えられるのがタンパク質不足です。
特に「痩せる!頑張る!!」というメンタルの場合、食事で栄養をしっかり摂っていないという場合も多いもの。
筋肉をつけ、体重・体型を変えていきたいという場合は食事はわりとちゃんと摂らないと全く変化がないということもあります。
具体的にはタンパク質を自分の体重×1.5〜2.0g程度を毎日摂れていることが望ましいです。(タンパク質の不足を補うにはプロテインを使用するのも便利です。)
筋肉をつくる材料として一番重要なのはタンパク質のため、筋肉の合成を促すHMBという工具はあるけどタンパク質という材料がないので筋肉増えず、効果なし、ということになってしまいます。
特に女性はダイエット中、肉や魚を敬遠し、野菜や果物でビタミン・ミネラルをとって食事量もおさえて、となりやすそうな気もしますが、ビタミン・ミネラルもタンパク質がなければあまり意味のない栄養素です。
HMBの摂取量が多すぎ or 少なすぎて効果が出ない
HMBは摂取量の目安として、体重1kgあたり38mgといった指標で摂取すると効果的だそう。
いちいち計算するのは面倒なので、平均的な体格の人に当てはまる範囲で効果が最も高まるのが3000mgと言われています。
逆にいうとこれより少ない量だと効果を実感しにくくなります。
さらに、これはアメリカの大学など様々な機関で研究された結果で、3g以上の摂取をしてもそれ以上効果は見込めない、という論文も多く見られます。
これは体重1kg×38mgのHMBを摂取したグループ(目安で1日3g程度と考えればOK)と、1kg×76mgのHMBを摂取したグループ(1日6g程度)、HMBを摂取しないグループの3種類のグループで8週間の筋トレを見て筋力や、筋肉量の増加にどう差がでるか?という研究から。
この結果、1kg×38mgのHMBを摂取したグループ(1日3g目安)が最も筋肉量アップしたことがわかっています。
つまり、必要量以上にHMBを多く摂っても効果はなく、むしろ効果ダウンしかねないということ。(参考:Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate ingestion, Part I: effects on strength and fat free mass. – PubMed – NCBI)
飲めば飲むほど筋肉がつくわけではないので、あくまで体に負担なく代謝できる範囲での結果となるようです。
もし飲めば飲むほど…だと競技の時にドーピング扱いになるし、それだと飲めないっていうアスリートも出てきちゃいますよね。
取りすぎてもダメ、というと副作用とかも心配する方もいるかもしれませんが、日本の国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部のレポートでも、HMBの安全性はしっかりと確認されているので、3gの範囲を守っていれば副作用の心配もありません。
安全であるか?
研究では、成人による 1 日 3 g の最大 8 週間にわたる HMB 摂取において、副作用は報告されていない。
ビタミンやミネラルも、取りすぎると排出されちゃうとか、モノによっては体に負担がかかる場合もあるので、そういったものと同じ感覚にとらえるといいですね。
効果的な飲み方のタイミングなどについては、こちらの記事もあわせてご活用いただければと思います。
有酸素運動メインの運動では効果を感じにくい
次に有酸素運動でのHMBの使用についてです。
あまりいないとは思うんですが、筋肉の分解を抑える効果もあることから、有酸素運動での消耗を抑えるために、BCAAと同じ感覚でHMBを取り入れたいという方もいると思います。
結論これはあまり効果はないと思います。
この理由は2つあって、まずHMBに脂肪燃焼を助ける効果はないので、あくまで筋肉量アップのために使用するのがベストだということ。
女性なら筋肉が増えることで、痩せやすい体にするためとか、筋肉モリモリになりたい男性とかは、それ目的がベスト。
それに、有酸素運動のアスリートを対象にHMBの摂取と持久力の伸び具合に関する研究もあるのですが、その効果はというと…
簡単な言い方をすると、息が上がるまでの時間などが約9%向上した、というようなもの。
実際の競技を考えると、2時間走って疲れを感じるまでに10分ほど余裕ができる、というような差です。
よほどタイムにこだわる持久系のスポーツをやっている人でないと、気が付かないレベルだと思いました。
筋トレ経験者で既に高い負荷に慣れていると効果は薄い説も
最後に、これは最近では意外とそうでもないという研究もあるのですが、HMBはトレーニング上級者にとってはあまり大きな効果はないという説もあります。
ただこれに関しては、より新しい研究でトレーニング上級者にとっても一定の効果は見込める、といった話もあり、判断が難しい・・・
とはいえ、いずれにせよあって悪いものではないというのが個人的な結論です。
筋肉のつきやすさでいえば、鍛え上げてわりと仕上がっている人よりは、これからトレーニングを開始する人のほうが断然、筋肉はつきやすいものです。
なので、筋トレ初心者のほうがHMBの効果をより強く得ることができるというのは間違いないでしょう。
以下はトレーニング経験の豊富なフットボール選手でもHMBで効果があったよという論文です。
Several studies have found that HMB supplementation enhances LBM and indices of performance during resistance training, independent of training experience.
中略
reported that HMB decreased body fat and increased LBM in experienced football players.
(訳:いくつかの研究ではHMBの摂取はトレーニング経験に関わらず、筋トレとあわせることで除脂肪体重とパフォーマンスを向上させることを発見しています。
中略
経験豊富なフットボール選手においてHMBによって体脂肪が減り、LBM(除脂肪体重)を増加させたと報告した。)
ダルビッシュ有選手もTwitterでHMBは自分はいいと思うと言ってます。
HMBに効果なしみたいは研究論文が発表されたと目にしました。
ですが自分にとってはテアニン、グルタミンに次いで体感できたサプリメントです。
色々な事、モノを試しまくってきた自分にとっては”最新の研究”に説得力はあまりないです。続
— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) 2018年8月14日
結論:HMBの効果は全能ではない
というわけで、今回はHMBの効果がないという話になってしまうケースについて、解説してみました。
日本では特に、HMBサプリをめちゃくちゃうさんくさくて怪しくてウソ丸出しの表現で販売しようとしている会社もあるため、何かヤバいものという認識をしてしまっていたり、また、ものすごい期待を持ってしまうこともあるかと思います。
ですが、HMB自体はごくごくふつうの栄養素でしかありません。怪しいものでもなく自然界にもあるもので、他の栄養素と同様に使い方によってはとても便利な効果を発揮します。
どんな栄養素もそうですが、あらゆる効果が期待できる全能なモノは存在しません。
それぞれ役割があり、使い方を理解し利用することでゴールへの距離を縮めてくれ、そして運動へのモチベーションをアップしてくれます。
HMBに対する不安や誤解が少しでも減って、健全な認識で手に取れるものになればいいなと思います。
今回の記事があなたにとって、より良いライフスタイルのきっかけになれば幸いです💪